母校支援

不確実性時代だからこそSimple is best!

1982年工学部応用化学科卒業の戸島です。大学時代は剣道部に所属して、諸先輩方に色々と鍛えられ、そのおかげで今の私があると思っています。現在は米国で働いていますが、海外赴任を通じて感じたことを書いてみたいと思います。

大学の卒業と共に、私の地元の山梨にある半導体製造装置を製造しているテルメックという中小の会社に入社しました。大学の卒業研究で半導体関連のテーマを選んだのが入社の動機になります。当時は、景気が良い時代でしたので周りからは「もっと大手の会社を選択したほうが良かったのでは?」と言われたものです。

現役生にとって会社選びは大きな悩みではないでしょうか。しかし、人が持っている価値観は人それぞれ違うものです。例えば、1+1=2のような明確な正解は人生には無いと思っています。中小企業には中小企業の良いところがあり、色々な分野の仕事(=勉強)をさせられる、入社半年の新人が客先のトラブルに引っ張り出されて仕事の責任を肌で感じられるなど、とてもやりがいを感じる場面は多く、そのような環境で仕事をさせてもらった事が、今の自分の礎になっています。

同時に、その頃は半導体産業の黎明期であったため、産業の規模の拡大に伴い、東京エレクトロンの子会社であったテルメックは、本社に吸収合併され、東京エレクトロンの社員としての社会人人生が始まり今に至ります。日本の半導体事業が全盛のころは、日本の各地に在った半導体工場を足繁く訪問したものです。

しかし、残念ながら日本の半導体の全盛はそう長くは続かず、現在は海外メーカーが主流になってしまいました。良いのか悪いのかは分かりませんが働く場が全世界に広がり、今は米国に駐在して社会人人生を歩んでいます。「世界が職場」の時代になってしまったと感じています。

海外赴任して感じること

海外で働いていると、日本との違いや気を付けるポイントなどをよく聞かれますが、海外で働く方は同様の感覚を持っているのではないかと思います。文化はもちろん、国の施策や学び方によって考え方が大きく異なりますから、日本でうまくいくことも海外ではゼロスタートということも多いものです。これから海外を目指す、もしくは海外に行くことが決まった方で準備段階の方は下記に注意しておくと、大きなショックも受けずに済むかもしれません?!

(1)語学
仕事では相手の言っていることを理解しようと努力してくれるので、片言の英語でも、伝えることは出来ますが、ヒアリングなど出来れば出来るほど良いのは当たり前です。幸い東京電機大学は、語学教育には力を入れているので、若いうちにしっかりとベースを身に着けておくと良いと思います。

(2)郷に入れば郷にしたがう
日本の鉄道の時間の正確性は海外でも有名ですが、日本人の時間の感覚は日本人特有のものといえます。残念ながら海外の時間の感覚は日本とは異なるため、その違いを認め、受け入れる心の余裕は必要かもしれません。

(3)物事の本質をつかむ
海外では、シンプルに相手に物事を伝えることが、仕事を進める上で極めて重要になります。そのために必要なことは、本質をしっかり掴むことです。本質が見えにくいときは様々な視点から本質を探し、見極めること。例えば円柱は横から見れば四角に、そして上から見れば丸に見えますが、目の前に見えるものやコトだけではなく、見える方向を変えることで本質が掴みやすくなってきます。そのうえで、シンプルに伝えることが可能になってくるのです。

(4)仕事のOn Offのメリハリをつける
米国では夏時間があるように夏の日の入りは遅く、21時でも外が明るいので仕事が終わってから余暇を楽しむことが出来ます。また、夕方の17時ぐらいに一番気温が上がるので、現地のワーカーは7時に仕事を始めて15時に切り上げるのが一般的です。

このOff時間の過ごし方次第で駐在の楽しみが倍増しますので、今後海外赴任を予定している方は是非、趣味を持つことをお勧めします。私の場合、剣道やゴルフを満喫しています!

年を重ねて思うこと

若い時にはあまり考えることはなかったのですが、年を重ねると若い時に努力しておけばよかったと悔やむことがあります。今、若い方に伝えたいのは、若い時の努力は無駄にはなりません。嫌な事もまずは取り組んでみてください。のちに役立つことが必ず出てくるはずです。

東京電機大学では色々と新しい取り組みを取り入れているので先端のテーマに触れることが出来ます。私の卒業研究である半導体関連のテーマも当時は先端の物でした。その時はマイナーであっても先端の分野に飛び込んだから面白い人生になったのだと私は思っています。

大学の剣道部に面白い格言があります。「大学4年間で得たものなし、失ったものは羞恥心」この格言の様に、大学時代は羞恥心を無くすような事をさせられました。しかし、この鍛えがあった故に、勇気を得られたのだと今は思っています。

若い時はどうしても周りの目を気にして、一歩がでません。その一歩を踏み出すことで見える景色が違います。この一言を言って周りから笑われたらどうしよう?と思いその一言を言わない。しかし、笑われても言うことで自分の間違いや勘違いが分かる。これは自分の糧になっていきます。

コロナ発生に伴い浸透したHome Workなど、時代は常に変化していきます。時代は変化しても、自分自身を信じ勇気をもって切り開き、若い世代の活躍を願っています。

1982年
工学部応用化学科卒業
戸島 孝之