母校支援

「好き」を原動力に!機械愛あふれる鉄道運転士のキャリア

「電大ってエンジニアを育てる学校だよね? どうして専門外とも思えるドライバーに?」そう不思議に思う方も多いかもしれません。

お疲れ様です。2009年に工学部機械工学科を卒業しました、仙波光(せんば・ひかる)と申します。珍しい苗字なので、どこへ行っても重宝しています。気付けば40代になってしまいました。ついこの前、期待と不安を胸に電大の門を叩いたばかりだと思っていましたが、時の流れというのは実に残酷なものです。

しかし、その月日の中で私は、幼い頃からの夢を「鉄道の運転士」という形で叶え、今も現場の最前線に立っています。今回は、一見「異色」に見える私のキャリアと、その根底にある電大での学び、そして「機械」に対する消えない情熱についてお話しさせていただきます。


宗谷本線の貸切列車に乗車

大学受験と、苦く多忙な学生時代

私の大学選びは、至ってシンプルでした。「鉄道が好きだから、車両や設備を作る会社に入りたい」。そんな想いで予備校のコード表を見ている時に偶然出会ったのが、東京電機大学でした。機械工学科を選んだのも、「機械全般、いろいろできそう」という漠然とした期待からです。決して手先が器用だったわけではありませんが、何かに導かれるように電大生となりました。

学生時代を振り返ると、まさに「鉄道一色」でした。部活は迷わず鉄道研究部。アルバイトも私鉄の駅員。平日は4限が終われば駅へ直行し、夕方のラッシュ対応に追われる日々。当然、レポートや部活動との両立は困難を極めました。

特に「壁」を感じたのは、機械工学科の花形とも言えるCADの実習です。図面の数字一つひとつに論理的な理由があることは理解できても、その計算の複雑さと提出期限に追われる日々は、私に「自分はこの仕事に向いていないかもしれない」という予感がしました。結局、英語の単位が1単位足りずに留年。当時は勉強そのものが嫌いになりかけていた時期でもありました。


伊豆半島の貸切列車に乗車

『金を失う道』と書いて鉄道。選んだのは「現場」という生き方

2度目の就職活動を迎えるにあたり、私は大きな決断をしました。設計職を目指すのではなく、現場の最前線、つまり「運転士」を目指すことにしたのです。

背中を押したのは、アルバイトでの楽しかった経験と、鉄道研究部のOBの方々からの言葉でした。そして何より、小学校の卒業アルバムに「電車の運転士になる」と書いていた自分を思い出したのです。

電大卒として「ありがちな進路」に進むよりも、自分の「好き」に正直に生きる方が自分らしい。実に単純な動機でしたが、私にとっては人生を懸けるに値する選択でした。

2009年、幸いにも中部地方の鉄道会社(A社)に内定。当時は大卒が「現業職」として採用され始めた過渡期で、運良くその波に乗ることができました。駅員、車掌を経て、2012年に国家資格である「動力車操縦者免許」を取得。ついに運転士としての第一歩を踏み出しました。

その後、2016年には縁あって関東の鉄道会社(B社)へ転職。ここでも再び厳しい訓練を経て運転士となりました。現在はワンマン運転の路線を担当していますが、日々の乗務は驚きと発見の連続です。

鉄道車両にも個体差があります。編成ごとに癖が異なり、天候や乗車率、電圧、周囲の列車の有無によってもブレーキの効き方が変わります。そんな「生き物」のような機械を相手に、停止位置に時間通り、ピタリと止める。お客様が何事もなかったかのように乗り降りされる背中を見たとき、エンジニアとはまた違う「技術者」としての醍醐味を感じるのです。

自動運転(ATO : Automatic Train Operation)が導入されている路線ですが、私はあえて手動運転の訓練を積極的に行っています。機械任せではなく、自分の体感とテクニックで巨大な質量を操る。その瞬間、私は間違いなく「電大OBらしい機械好き」としての充足感に包まれています

余談ですが先日前職であるA社の同期に、「手動運転の訓練時間、毎月職場でTOP3に入っているよ」と自慢したら「転職先を選ぶの、失敗しとるがや!」

とツッコミを受けました。どうやら自分は機械任せの自動運転よりも、体感とテクニックを駆使した手動運転の方が好きなようです。

今後の目標としては10年以内に助役試験に合格して、運転士や若手職員をマネージメントできる仕事をすることが目標です。希望としては1年でも長く運転士を続けたいとは思っていますが・・・


函館市電の貸切列車に乗車

未来を担う若手OB、そして学生の皆さんへ

最近の私は、仕事以外でも「機械」に没頭しています。電池を使わずに動く機械式時計の緻密さに惹かれて「ウオッチコーディネーター」の資格を取ったり、バイクに乗り始めてそのメカニズムに感動したり。学生時代のワークショップでポケットバイクの分解・組み立てを履修しなかったことを、今さらながら後悔しているほどです。

これから社会に出る現役生や、キャリアに悩む若手OBの皆さんに伝えたいことがあります。「好きなことは趣味にしておいた方がいい」という意見もあるでしょう。しかし、もし「好き」を仕事にして生きていけるチャンスがあるなら、一度は全力でチャレンジしてみてください。

鉄道の運転理論や電気の知識を学ぶとき、電大で培った理系の素養は必ず大きな武器になります。そして何より、好きなことで社会に貢献しようとする姿勢は、本学の精神である「技術は人なり」の体現そのものだと私は信じています。

鉄道業界も今、大きな変革期にあり、人手を必要としています。もし、この記事を読んで少しでも「乗り物」や「機械を操ること」に胸が躍ったなら、ぜひ鉄道の世界を選択肢に入れてみてください。

「好きこそものの上手なれ」。 40歳になった今、私は改めてこの言葉の力を信じています。皆さんの挑戦とご活躍を、線路の先から応援しています。


時計のムーブメント:ウオッチコーディネーター合格後、実習で時計の分解・組立を経験。
自分で組み立てた機械が再び動き出す瞬間は感動です。

2009年
工学部機械工学科卒
仙波 光